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究極にシンプルな丸い水滴 [物]

究極にシンプルな丸い水滴



私はどちらかというと、
小さなものが好きです。


大きなもののダイナミックな魅力も捨てがたいですが、
掌に乗るような小さなものは
なんとも可愛いですね。


そして、
私はどちらかというと、
ごちゃごちゃ飾り立てたものよりは、
すっきりとしたシンプルなものの方が好きです。


洗練されていて気品があるように感じられるからです。








そんな私が大好きなもののひとつは
「水滴」です。


お習字をするとき、
硯に水を注ぐのに便利なものです。









世の中はインターネットなどという便利なものが登場し、
その恩恵を受けない生活は最早ありえません。


しかし、
戦後にテレビが普及してきた頃から、
世の中から本物の美しさが消えてきたようにも思えます。


大工場で、機械を使った大量生産。


それによって、
ある一定レベルの色々な品物が安く買えるようになりました。


それで十分良い品物も多いのですが、
私にはなんだか全部受け入れられない感情があるのです。








いちいち、手でものを作っていたあの頃。


作り手によって、
その出来栄えには大変なばらつきがあるし、
思い立ったらすぐになんて手に入らない。


しかも、
良いものは値段も良い。


だからこそ、
買うにも長い時間をかけて吟味するし、
買ったあとも手入れや修理をしながら、
何十年も、
いや何世代にも渡って受け継がれて、
大事に大事に使います。


つまり、
「人と物が真剣勝負をしていた時代」
とでも言えましょう。







一方、
今の世の中に溢れているものは、
今すぐ買える、安く買える、
でも、ほんのワンシーズンで終わってしまう、
そんな使い捨てのものが多いですね。


つまり、
「人も物も刹那主義」というような
そんな薄っぺらいお粗末なものが増えてきました。


とても便利でいいけれども、
なんだか虚しい気がしてなりません。









もののなかった時代、
貧しくて不便だったけれども、
そこに尊い心が宿っていた時代、
その象徴としてあげられる代表的なものは
「毛筆」ではないでしょうか。


「墨汁(ぼくじゅう)」などというものが売られるようになってから、
毛筆文化は変わってきたのでしょう。


正座して、
机の上の硯の上で墨を磨る。


力はいるし、時間もかかる。


けれども、
そこからほのかに立ち上ってくる
えも言われぬ高貴な墨の香り。


筆で貴重な紙に文字を書くという行為への、
覚悟と緊張感が高まってきます。


そんな場面で、ふと心を穏やかにしてくれるのが、
お気に入りの水滴ですね。


悪筆でも、
精一杯心を込めて書くことさえできれば、
今日のところは、それでもう満足しましょう。


そして、決して諦めずに、
「書の道」を歩いて行きましょう。


そんな安らかな心持ちに導いてくれます。










今回の作品は
究極にシンプルなものです。


etre_mo.JPG



形も丸くてシンプル、
色も土と火だけにお任せした
これ以上ないシンプルな仕上げ。


シンプルということの難しさを
ひしひしと感じながら作りました。


出来上がってみれば、
なんということのない作品ですが、
掌で何度も慈しむように形造ったこの水滴は、
窯から出てきてから、もう何年も経っている今でも、
私の掌の中にすっぽりと収まって、
手放したくない一品なのです。





eyutuytytu_mo.JPG

etyrutry_mo.JPG


高さ6cm。

直径7cm。
 
底面の直径4・5cm。







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