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「名誉を捨てて、愛と自由に生きる」と決意した尾長鶏のプリンス「土佐ジョージ」 [動物]

2013.11.23

NEC_0747.JPG

「名誉を捨てて、愛と自由に生きる」と決意した尾長鶏のプリンス「土佐ジョージ」



男は見てくれじゃないのさ。

尻尾の羽根が長いからって、
それが一体なんの価値があるんだ?


「特別天然記念物」だってさ。

笑わせんじゃないぞ。


1974年に13m。

1974年7月20日の10.6mがギネスだと。


それが一体なんなのさ。



俺たち「尾長鶏」の男はよう、
本来は生え換わるべきはずの尾羽がよう、
一生ずっと生え換わらないんだ。

だから、
生きてる限り尾羽が伸び続けて、
長くなるんだ。



それを、人間のやつは、
もっともっと尾羽の長い「尾長鶏」が欲しいからって、
本当に酷いことをしてきやがった。


自由な恋愛もご法度、
勝手にあれこれと相手をあてがって、
それで交尾して卵を産めだと。


そりゃあ、おっかさんたちゃあ、怒るぜ。

卵を産むことは産むがよ、
産んだ途端にほっぽり出して、
完全無欠の育児拒否さ。


それを見かねた、チャボのおばさんが親切にも
卵を抱いてくれて、
やっと、俺がこの世に出て来られたのさ。


せっかくのチャボのおばさんの頑張りにも、
卵から孵ってこられたのは、ほんの僅か。


しかも、
その中でも、
尾羽が長くなるのは男子だけ、
男子の中でも、才能があるのはまたこれ僅か。


俺はおとっつあんのDNAをもろに受け継いだから、
尾羽が長くなる素質があって、
将来有望と見なされた。


んで、チヤホヤされたかって??


とんでもないぞ。


なんの世界でも有名になるには、
生まれつきの素質に加えて、
血のにじむような努力が不可欠なんだ。

誰にも言わないけどな。


NEC_0751_mo.JPG

現在の尾長鶏のチャンピオンであるおとっつあんはな、
もう何年も、縦に細長い窮屈な木の箱で過ごしているんだ。


長い尾羽が傷んだり、汚れたりしないように、
高い台の上で、じっと立ったままでいるのさ。


その「止箱」という箱の中で
食事も排泄もする。


この牢獄から出られるのは、
1週間に2回、
それも、ほんの10分くらいだけ。


尾羽が土につかないように、人間が持って、
そして、シズシズ歩くだけなのさ。



これでは、まるで刑務所よりも酷い環境じゃないか。


こんな中で生きて、そして死んでいくのが、
尾長鶏のチャンピオンというおとっつあんの一生なのだ。



俺も尾羽が伸びてきて、
将来が有望、
木の箱に入る「栄光の道」が見えてきたそんな頃、
ある日、
チャボのおばさんとミミズを食べていたら、
お付の人間に尾羽を持たれて、
前を見据えて胸を張って、
堂々とした姿で歩くおとっつあんに会った。


NEC_0749_mo.JPG



何にも知らない雛鳥どもは、
長いマントの端を持たれて歩く王様のような姿に、
憧れの目を向けて、キャアキャア言いやがった。



しかし、
俺にだけは
おとっつあんの一瞬見せた悲しそうな目から、
おとっつあんの意思が、
まるでテレパシーのように伝わってきたのだ。



「お前、
ここから逃げるんだ。

尾羽が長いからって、容姿を褒められたって、
なにも良いことはないぞ。


男の人生はな、
本当に好きな女を愛し抜くことなのさ。


そのためには、
汗や泥にもまみれて、
なりふり構わず働くしかないのさ。


それは辛いことが多いが、
しかし、その結果得られる喜びも大きいのだ。


たとえ、
それが、ほんのちっぽけなものであったとしても、
愛する者と分かち合えば、
嬉しさも100万倍になるというものさ。


俺は、身動きすらできないあの「栄光の箱」の中で
もう何年も、たったひとつの自由を許された脳みそで、
広く自由な世界を空想して耐えてきた。


この箱の中に入れさえれば、
暑くもないし、寒くもないし、
そして、豪華な食事にも事欠かない。


しかし、
俺は外で過ごしている、
土や糞に塗れた貧しいお前たちが羨ましくて仕方がない。


尾羽が長いというだけのことで、天然記念物だのと呼ばれて、
拍手されたってなにも嬉しいことはないのだ。


それにな、
この尾羽だが、
人間どもの続けてきた無理な近親交配の結果、
ご先祖様のような長い尾羽はもう生えなくなってきてしまったのだ。


俺たちの時代は、
どう頑張ったって、もう3m超、
大半の仲間は1mがやっとなのだ。


それを嘆いた人間どもは、
昔のような長い尾羽の尾長鶏を作り出そうと、
さらに躍起になっている。



そんな現実にすっかり嫌気がさした俺は
何度も、散歩の途中で逃亡しようとしたのだが、
こんなに尾羽が伸びてしまったら、
もうどうにもならないのさ。


息子よ。

たった一度きりの人生だ。

自由に生きて、その人生の楽しみも苦しみも堪能しろ。

そうだ、俺の分まで生きろ。

俺の分まで、愛し尽くして、そして人生を終えるんだ。


さあ、今がチャンスだ、
逃げろ。

行くんだ。

なにをぐずぐずしている、
さあ、行け!!」



俺はチャボのおばさんや雛鳥どもが
おとっつあんの姿にポオッとなっているその隙に
忍び足で生け垣の隙間から逃走した。


背中におとっつあんの身を絞り出すような声を聞きながら。



「コケコッコ~、コケコッコ~~!!」


それは俺にだけわかる別れの挨拶であり、
そして、前途多難かもしれないが、
愛と自由に満ちた新しい人生への旅立ちを祝福してくれる
そのエールであったのだ。



俺は行く。

俺は生きる。

自由と愛を探して、俺は生きて行くのだ。

どんな辛いことがあっても、
俺は絶対に自分の人生を生き抜いてみせる。

おとっつあんの分もな。。。。



幅。4・6cm

奥行き。5・0cm

高さ。13.4cm


中は空洞になっています。


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